打揚げ花火

玉の種類と仕組み

打揚げ玉には、主に「割物」と「ポカ物」の2種類があります 割物は、「菊」「牡丹」など球形で威勢よく開くもので、星(光や色彩、煙を出す球形の小さな火薬の塊)を球形の玉皮の内側に沿って順序よく並べ、その中に割薬(玉を空中で爆発させ星を四方に飛び散らす役目をもつ火薬)を入れ、外側を紙で厚く貼ったものです。
ポカ物は、玉が上空に達したときに、名前通りポカッと2つに割れるようにしたものです。ポカ玉は割薬の配合も少なく、玉貼りも薄くしてあり、音も小さく「柳」や「雨」、また遊星、パラシュ−トなどの「吊り物」に使われます。 またこの他に「小割」といって小さな菊花玉が大きな玉皮の中にたくさんはいっているものもあります。これは中身を遠くへばらまくため半割の作りをしております。 通常、打揚げられる花火は、星の色変化や玉の構造により複雑に変化するようにしかけられていますが、その基本的な型は主なところ以下の4種類です。
菊 (きく)
割物を「菊花型花火」というように、割物を代表する花火である。球形に咲く形から、先輩花火師達は「丸」と呼んだこともあった。菊の星は消えるところまできれいに尾を引いている。たとえば、自転車のスポークのようなものである。このため「引き」と呼ばれることもある。現在の菊は尾の先で変化する。二度、三度と変化するものを「変化菊」、先端が音とともに割れるものを「先割り菊」、芯が入ったものを「芯入り菊」、芯が二重になるものは「八重芯菊」などと呼ばれている。
牡丹(ぼたん)
尾を引く星で華を咲かせる菊にたいし、尾を引かない点となる星で華を描くのが「牡丹」である。薬剤成分が違うだけで玉の構造は菊と変わらない。芯の入った「芯入り牡丹」、色が変化する「変化牡丹」、先が割れる「先割り牡丹」などがある。古い花火師達は「満星」と呼ぶ。色の点で表現するからであろう。迫力、ボリュームでは菊に及ばないが、すっきりとした繊細な美しさがあり、菊とならぶ割物の代表である。ただ、写真では菊と牡丹の見分けは難しい。写真では光が尾を引いて写ってしまうので、牡丹も菊のように写ってしまう。
冠(かむろ)
尾を引く星を使っているが、星の燃焼速度を遅くして玉皮に貼る紙を減らして抵抗を弱めているので、華が開いた後ぱっと消えずに柳のように落ちていく。冠のような、あるいは女の子のおかっぱ頭から「冠菊」と呼ばれる。この花火の誕生にはエピソードがあり、どうやら燃焼速度の遅い星をつくってしまったらしい。花火は桜のようにぱっと咲いて、ぱっと散るのが理想だったので大先輩の花火師からは「だらしがネェ花火だ」とけなされた。ところが、「だらしがネェ花火」は観客にうけたのだから花火とは不思議である。
千輪(せんりん)
大きな玉皮の中に小さな菊花玉たくさんはいっている玉をいう。小さな菊が多数、同時に上がるので、百花園などと呼ばれる。

花火の構造

玉名(ぎょくめい)

打揚げ花火には一発ごとに名前がついており、それを玉名といいます。そして名前をみれば中身がどのようになっているか、空でどのような模様を描くかがわかるようになっています。 たとえば「錦牡丹先二化」といえば黄金色をした錦牡丹を広げ、先にゆくに従っていろが二度変化するといった具合です。これらはどの花火にも共通したもので、そのルールさえわかっていれば、名前を見ただけでどんな花火か想像できる便利なものです。玉名を見ると「引」とか「芯」とか「月」などといった文字がよく使われていますが、これらはそれぞれ次のような状態を表しています。
引(ひき)
引とは炭の火の粉が尾を引いているのをいう。たとえば「引先紅」といえば、星がまず炭の火の粉の尾を出して広がり、ついで先がぱっと赤色になるという具合です。
芯(しん)
花火の中心部に咲く二重三重の花(同心円)をいう。芯には単芯、八重芯、三重芯、四重芯があり、「紅芯引先緑」といえば、芯は赤、花弁は引から緑に変わる花をいう。
顕(けん)
たとえば、菊花が消えた後に小花の群れが現れるように今まで闇に隠れていたものが現れることをいう。(浮き模様)
月(残月)
菊花のあとで照明が現れるものがあります。これは割物の中央に燃えないように紙にくるんだ落下傘つきの照明が入れてあり、これがあとで現れる仕組みで、これを「月」という。
露(光露)
星の最後がキラキラ光るものをいう。特に強く光るものを「輝」という。
曲導(きょくどう)
花火玉が空へ上がる途中でさまざまに変化することを「曲導」という。たとえば、玉が上がりながらパッパッと星を出していくのを「昇り分星」「昇り分火」、小さな花を咲かせながら上がっていくのを「昇り小花」、炭火の粉の尾を引いて上がっていくのを「昇り木付」、銀色の尾を引くのを「銀竜」などという。

玉の大きさと重さ

割物玉の大きさは、2.5号玉より40号玉まであり、普通の花火大会で打揚げられるものは、3号玉から5号玉ぐらいまでです。号数は直径の長さを表わし、1号は1寸(約3.03cm)となっています。
重さは5号玉の割物で約1,000〜1,200g近くあります。日本で最大の花火を打揚げる新潟県片貝地区の花火大会の呼び物、40号玉は、直径約120cm、重さは約420kgで、クレーンでつり下げて筒に装填します。
一発の打揚げで、鑑賞に耐えられる細工を施せるのは、どうしても5号玉以上で、それ以下の2.5号、3号玉などは連続して打揚げ、そのバラエティーを楽しむといったものになります。
(写真は15号玉)

玉の座り、玉の盆

花火をもっとも美しく現出させるには、玉が一番高く上がった位置で割薬に点火させるのがコツといわれています。この玉の最高高度を”玉の座り”といいます。
導火線が短くて上っている途中で破裂すると、星が上向いて飛び散り、また下降に入ってからでは星は下に向いて散り、いわゆる”おちょぼ傘”になります。このあたりの呼吸が、花火の打揚げの難しいところです。
また、玉が座って炸裂し、星が散って完全な球形を作ることを”玉の盆”といいます。この盆の大きさは、玉の寸法にあった大きさで中心を芯とし、上下、縦横、どこを切っても真円を描いていなければならず、できの悪い玉では上空で開花させても完全な球形をつくることができません。
この完全な球形を作るためには、割薬の強さと、玉皮、外皮の強度とのバランスが不可欠となります。玉殻の抵抗が割薬の爆破力をちょっとでも上回っても下回っても完全な球形を作ることはできず、まさに花火師の熟練した腕のみせどころといえます。